NO193 平成新山(溶岩ドーム)を目の前に雲仙普賢岳に立つ。
2006/06/02
福岡県北九州市にある『九州と信州の会』の主催で第8回の『北アルプスの魅力を語る集い』が5月29日に小倉にて開催され、私もお招きにあずかり白馬山荘の松沢さん、燕山荘の赤沼さん、槍ヶ岳山荘の穂苅さんとともに参加させていただきました。毎年福岡県を中心に北九州地方や山口県から300人近い大勢の登山愛好者がお見えになり盛況な会です。
近年は私共の山小屋でも以前とは比較にならないぐらいに九州からのお客様が増えており、九州地方の皆さんの北アルプスへの思いの強さをひしひしと感じております。
今夏も遠く九州からのご来荘を心よりお待ち申し上げます。
この催しには私もここ5年ほど参加させていただいております。ちょうど夏山シーズン入り前の何かと慌しい時期でいつもとんぼ返りで翌日には慌しく戻ってくるといった状況でしたが、せっかく遠く九州まできてとんぼ返りではあまりにもったいなく思うようになり昨年は以前からずうっと見てみたいと思っていましたミヤマキリシマに会いに翌日は久住岳へ行ってきました。あこがれのミヤマキリシマは期待に違わぬ
可憐さで長年の夢がかない大感激をいたしました。長者原から周囲の山をぐるっと見渡すとそこかしこがピンクに染まり、あれがミヤマキリシマかと思うだけでもぞくぞくしたものです。今年
はそのミヤマキリシマに会いに雲仙へ行ってきました。諫早でレンタカーを借りて雲仙温泉へ向かう途中の千々石町では偶然道路沿いに見つけた一帯の棚田を見て心動かされ1時間
半も付近を散策するといった突然の計画変更もありました。日本の原風景を見るような石垣の棚田をまわるにつれ、管理のご苦労を思わざるをえませんでした。いつまでもこの素晴らしい農村文化ともいえる立派な棚田を守っていっていただきたいものです。
また日本で一番最初に国立公園に指定されたという雲仙ですが、雲仙温泉もなかなか風情のあるいい感じの温泉でした。いつの日にかゆっくりと湯治に訪れたいものです。
さて仁田峠で車を降りると一面のミヤマキリシマです。しかし何か植栽されたような感じでどうも1年ぶりの対面もいまひとつピンときません。やはり山好きの者にとっては自分で歩いて、登って
、額に汗して目にしたものでないと感激の度合いが違います。私共の山小屋へ登ってこられるみなさんの思いがよくわかりました。
やはり“高嶺の花”は高嶺にあってこそ、その輝きは増します。
仁田峠からは妙見岳、国見岳、そして雲仙普賢岳と縦走して往復してきました。妙見岳へと登るにつれて今が満開のピンクのミヤマキリシマがそこかしこに咲き誇り、私のいらぬ心配も吹き飛んでしまいました。さらに妙見岳の稜線や国見岳は全山ピンクに染まり心満たされる稜線歩きになりました。
登山道は結構険しい箇所もあったりで距離的には短いのですがなかなか面白みのあるコースでした。ほぼどの地点からも1990年(平成2年)11月の水蒸気爆発から始まって1996年の活動停止まで激しい火山活動をくり返して出来上がった平成新山(溶岩ドーム)を間近に見ることができました。噴火活動開始時には普賢岳(1359m)よりもはるかに低く火山湖や普賢神社が建っていたという火口原は何個もの溶岩ドームの形成と崩壊を繰り返しながら普賢岳よりはるか高く、最終的には200mも隆起して標高1482mの平成新山へと変貌したのです。間近に見るその姿には畏敬の念を覚えます。溶岩ドームには所々うっすらと緑が広がってきているのも見えました。次に来る時にはさらに木々におおわれた穏かな平成新山であることを願いつつ頂上を後にしました。
下山後は車を島原市へと走らせましたが、眼前に聳え立つ平成新山を見ていると当時のテレビ映像が思い起こされ身震いするほどです。ほんとうにすぐ目の前の山です。数年にわたって火砕流や土石流の恐怖と対峙し続けた山麓の皆さんの思いというものは想像を絶するものだったことと再認識いたしました。おりしも明日6月3日は平成3年の大火砕流発生から15周年になります。山麓の復興および復旧は相当に進んでおりましたが、『天災は忘れた頃にやってくる』の格言どおり、あの噴火の歴史や災害への認識等は絶対に忘れてはならないことだと私自身も肝に銘じて島原を後にいたしました。北アルプスでも過去に幾多の災害や被害もありました。自然災害による遭難も後がたちません。やはり山や自然が抱えるエネルギーというものは私たちが到底及ばないものであることは間違いないようです。
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雲仙へ向かう途中の千々石町には見事な棚田が広がっていました。 |
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大感激の一帯の棚田でした。いつか稲穂ゆれる秋にも訪れたいものです。 |
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雲仙温泉にある地獄めぐりもまた楽しい。湯の花がいっぱいたまっていました。 |
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雲仙妙見岳の立派なミヤマキリシマ。長崎ではウンゼンツツジと呼ぶのだそう。 |
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ミヤマキリシマ咲き誇る妙見岳稜線からまるい頂上の国見岳へと向かう。 |
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雲仙普賢岳へ向かう途中からミヤマキリシマでピンクに染まる国見岳を見返る。 |
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妙見岳稜線から一番奥に平成新山(溶岩ドーム)と手前に雲仙普賢岳。 |
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国見岳頂上からの平成新山(溶岩ドーム)がいちばんどっしりとした感じだった。 |
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一番高かった雲仙普賢岳(道標)をはるかに追い越す姿におさまった平成新山。 |
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所々から小さな煙が上がるものの、当時からは想像できないおだやかさだ。 |
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島原市側からの平成新山。山麓には砂防ダムが連続して土石流から街をまもる。 |
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火砕流の通った跡も緑化工事が進み、点在する巨大な火山岩が面影を残す。 |
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